UCSF Chimera入門
はじめに
			論文やポスターにかっこよくタンパク質のPDB構造を載せたい、という人のために「UCSF Chimera」というソフトの使い方を紹介します。
			他のPDB Viewerと比べてシンプルな画面と操作で、綺麗な画像が出力できます。
			
			
			
				USCF Chimeraのダウンロードは公式サイトから行います。
				
			
					USCF Chimera 公式サイト
http://www.cgl.ucsf.edu/chimera/
				Windows, Mac, Linux版ともに揃っているので、自分の環境に合ったものをダウンロード・インストールしましょう。
			http://www.cgl.ucsf.edu/chimera/
				NOTICE! この記事はUCSF Chimera 1.5.3 for Macをもとに作成していますが、他のバージョンでも動作は大体一緒です。たぶん。
			
			PDBファイルを開く
				PDBファイルの開き方は2種類あります。
				
			- あらかじめPDBのWebからダウンロードしておいたPDBファイルを開く
 - 指定したPDB IDの構造をダウンロードして開く
 
					PDBファイルを開く場合
File -> Open -> (ファイルを選択)
				後者ならば、「File」「Fetch by ID」を選択し、「PDB」の項目に「PDB ID」を入力すれば、自動的にPDBのデータベースからPDBファイルがダウンロードされ、画面に表示されます。
				File -> Open -> (ファイルを選択)
					PDB IDを指定してダウンロード
File -> Fetch by ID -> PDB -> (PDB IDを入力)
				どちらの場合でも、最初は白色のリボン図の状態です。
			File -> Fetch by ID -> PDB -> (PDB IDを入力)
色を変える
				黒背景・白モデルのままでもタンパク質の構造はわかりますが、このまま印刷するとインクの消費量が凄まじいことになって研究室のメンバーから「研究費の無駄遣い」「地球環境の敵」と罵られます。
				そこで色を変えてみましょう。まずモデルに操作を施すために「コマンドライン」を呼び出します。
				
			
			
					コマンドラインを呼び出す
Favorite -> Command Line
			Favorite -> Command Line
				ここにコマンド(命令)を入力すれば、結果が画面に反映されます。たとえば
				
			color redと入力すれば、モデル全体が赤色になります。
				
					モデルの色を赤に変える
					
				これで色を変えることができます。
				他に使える色は、下記ページを参照してください。
					color red
				
						Chimera Built-in Colors
http://www.cgl.ucsf.edu/chimera/docs/UsersGuide/colortables.html
				しかし、タンパク質全体を赤くするだけでは、共産圏のスパイだと思われることはあっても、構造や機能が分かりやすくはなりませんね。
				機能上重要なアミノ酸やドメインだけを色分けしてみましょう。
			http://www.cgl.ucsf.edu/chimera/docs/UsersGuide/colortables.html
				Chimeraで使われるモデルは、以下のような階層構造となっています。
				
					
						
				タンパク質の特定部分に色をつけたい場合は、「どのmodelの、どのchainの、どのresidueの、どのatomか」という方法で指定します。
				たとえば「model #0の、chain aの、残基27」を赤くしたい場合は、以下のようなコマンドを入力し明日。
				
			| 階層 | 意味 | 指定方法 | 
|---|---|---|
| models | PDBファイルごとの単位。 Chimeraで開いた順に#0, #1, #2...と番号が振られる。  | 
							#0, #1, #2... | 
| chains | タンパク質のドメインごとの単位。 PDBファイル内でa,b,c,...と指定されている。 *ドメイン以外にも、DNAタンパク質複合体におけるDNAを指す場合などもある。  | 
							.a, .b, .c, ... | 
| residues | 残基ごとの単位。 PDBファイル内で1,2,3,...と指定されている。  | 
							:1, :2, :3 ... | 
| atoms | 原子ごとの単位。 アミノ酸ごとに命名規則がある。  | 
							@CA, @O... | 
					model #0の, chain aの, 27番残基の、Cα原子を赤くする
					
				
			color red #0:27.a色を定義する
				ChimeraのBuilt-in colorは山ほどあるので不足することはまず無いですが、
				たとえば「外側を半透明にして内側を見やすくしたい」という時に「色を定義する」という技を知っておくと便利です。
				例えば、半透明の赤を定義したいときは
				
			colordef transparent 1 0 0 0.5
				と書きます。
				colordef
				コマンドでは「色名」(今回はtransparent)および4つの数値を指定できます。4つの数字はそれぞれ赤色、緑色、青色という光の三原色、および不透明度(省略可能)です。
				
					半透明の赤色を「transparent」という色名で定義する
					
				
				いったん定義してしまえば、あとは最初からある色と同じように扱えます。また既存の色にcolordefを適用して、色の定義を変更することも可能です。
			colordef transparent 1 0 0 0.5位置の指定方法
				この他にも様々な指定方法があります。以下に主なものをまとめました。
				
					
						
			
			| コマンド | 意味 | 
|---|---|
| さらに詳しい事は http://www.cgl.ucsf.edu/chimera/docs/UsersGuide/midas/frameatom_spec.html を参照 | |
color red #0 | model #0を赤くする。 | 
color red #0:.a | model #0のchain aを赤くする。 | 
color red #0:27.a | model #0のchain aの27番残基を赤くする。 | 
color red #0:3-15.a | 3〜15番残基を赤くする。 | 
color red #0:3,7,15.a | 3,7,15番残基を赤くする。 | 
color red #0:25-end.a | 25番目からC末までを赤くする。 | 
color red #0:27.a za<10 | 27番残基の周辺10Åを赤くする。 | 
color red #0:lys  | model #0のLys残基を全て赤くする。 | 
color red #0:hydrophobic  | model #0の疎水性残基を全て赤くする。 | 
color red helix | α-helixを全て赤くする。 | 
color red strand | β-strandを全て赤くする。 | 
color red #0 & helix | model #0のα-helixを赤くする。 | 
様々なコマンド
				色を変える以外にもChimeraには様々なコマンドが存在します。以下に一例を挙げます。
				
					
						
			また、あるコマンドの逆操作を行いたい場合は、コマンド名の前にチルダ 
		| コマンド | 意味 | 
|---|---|
| さらに詳しい事は http://www.cgl.ucsf.edu/chimera/docs/UsersGuide/framecommand.html を参照 | |
delete (位置) | モデルの一部分を削除する。 | 
show (位置) | アミノ酸の全原子を表示する。 | 
~ribbon (位置) | リボン図を隠す。 | 
repr bs (位置) | 原子をボール・スティック表示にする。 | 
color byhet (位置) | 原子を元素ごとに色分けする。 | 
set bg_color white | 背景を白くする。 印刷用の資料では絶対にこれを実行しましょう。  | 
set silhouette | モデルを縁取りする。 背景を白くした後にこれを実行すると見やすくなります。  | 
mm #0 #1 | model #0と#1の重ねあわせを行う。 同一タンパク質の2構造を比較するとき、違いが分かりやすくなる。  | 
swapaa ala (位置) | 特定位置のアミノ酸をAlaに置換する。 | 
colordef red 1 0 0 0.5 | Redという色の定義を変更する。4つの数値で光の三原色(赤、緑、青)、不透明度を指定。蛋白質の内側を見せたいときに半透明表示は有効。なお既定色以外の色を新たに定義することも出来る。 | 
~ を付けます。
			たとえばリボン図を消すコマンド~ribbonは、もともとリボン図を表示するコマンドであるribbonの逆操作です。
			画像の出力
				モデルが完成したら、以下の手順で画像をPNG形式で出力できます。
				OS機能のPrint Screenを使って画像を作成することも可能ですが、こちらの方が綺麗に出力されます。
				
			
					画像の出力
File -> save image -> (解像度などを指定) -> Save as
				File -> save image -> (解像度などを指定) -> Save as
					NOTICE!
					この操作で保存されるのは「画像」であって、タンパク質モデル作成の「作業過程」ではありません。
					作業過程を保存したい場合は、
File -> Save Session As
を選択してください。「この画像はもう完璧、もう二度と作成しない」というなら作業過程を保存する必要はありません。
			File -> Save Session As
を選択してください。「この画像はもう完璧、もう二度と作成しない」というなら作業過程を保存する必要はありません。
製作例
				実際のモデル作成例をひとつご紹介します。
			
			- File -> Fetch ID -> PDB "1FAP" で PDBデータをダウンロード。
 color blue #0:.aで、chain aを青くする。color red #0:.bで、chain bを青くする。- 向き調整、
color white ligandでligandを白くする。 color byhet ligandでリガンドを元素ごとに色分け。set bg_color whiteで背景を白くする。set silhouetteで図を縁取りして見やすくする。-  File -> Save Image で画像出力。
			
			完成!